『カンゾー先生』

【監督】 今村昌平
【出演】 柄本明,麻生久美子,ジャック・ガンブラン,松坂慶子,世良公則
【公開】 1998年 日 129分
【受賞】 第50回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール
【ジャンル】 人間ドラマ

予告編

あらすじ

昭和20年夏、開業医である赤城風雨が走っていた。彼は父の代からの家訓を守っていた。「開業医は足だ。片足折れなば片足にて走らん。両足折れなば手にて走らん。疲れても走れ。寝ても走れ。走りに走りて生涯を終らん。」と。

病人の家を往診して回っている生活をしているが、病人たちはほとんど無償に近い値段で診てくれる風雨に感謝しながらも、一方でどんな患者にも肝臓炎としか診断しない風雨のことを「肝臓先生」と呼んでいた。

ある日、淫売癖のあるソノ子が赤城医院に看護婦としてやって来る。それからしばらくして、風雨に岡山県医師会からブドウ糖注射を使いすぎるのではないかという指摘がなされた。肝臓炎にはブドウ糖が欠かせない。風雨は医師会に強く反発する。これを契機に偶然手に入った顕微鏡を使って、肝臓炎の病原体の研究をしようと意気ごむ風雨。仲間の手も借りながら研究に没頭する風雨。しかし、研究に没頭するあまり、診察を受けられなかった町の老人が死んでしまう。そして肝臓先生は気づく、自分は町医者なんだと。

レビュー

麻生久美子の存在に尽きる。もちろん柄本明の演技は素晴らしく、さすがと唸らされるが、それにも増して、映画初出演である麻生の演技は素晴らしかった。度胸があるといいうのか、物怖じしない迷いのない演技で、どこまでも思いを真っ直ぐに伝えてくる感じが、おそらくベテラン俳優には演じるのが逆に難しい部分を、不器用ながら真っ直ぐに表現しようとする麻生にピッタリだったのだろう。

それにしても晩年の今村作品には独特の空気がある。「うなぎ」にしろこの作品にしろ、この後の作品である「赤い橋の下のぬるい水」しろ。晩年に行くにつれ、人間のサガ、根本的な部分へとフォーカスしていくのを、コミカルに映画としての面白さで包みつつ、表現しているのがとても楽しめる。テーマは深いけど、それをストレートには伝えずにゆるーいタッチで訴えかけている。

 

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