【監督】 チェン・カイコー
【出演】 コン・リー,チャン・フォンイー,チャオ・ペンシャン,ジョウ・シュン
【公開】 1998年 中・日・仏・米 166分
【受賞】 カンヌ国際映画祭江東技術委員会賞受賞
【ジャンル】 人間ドラマ
大帝国に相応しい、壮大なスケール感に圧倒される。
あらすじ
紀元前3世紀、六国が群雄割拠した戦国時代末期の中国。秦王「政」(後の始皇帝)は天下統一へ向けて覇業を着々と進行していた。彼の幼なじみで政を愛する「趙姫」は、彼の天下統一こそが民に平和をもたらすと信じ、燕国討伐のきっかけを作るために、政の偽の暗殺計画を仕組む。
趙姫は希代の暗殺者・荊軻と出会い、雇い入れる。彼は自分の生業に一度いやけがさして、暗殺者である事をやめていたが、美しき趙姫に心動かされ、加担していく。
一方、政は徐々に心変わりしてゆき、趙姫の故国の趙で大虐殺を行った。趙姫は政を見切り、荊軻と深い仲になってゆく。そして趙姫への愛のために荊軻は燕の使者として政に謁見しに向かうのだった。
レビュー
物語は史実をベースとしている。主要登場人物は実在する。紀元前3世紀、世界で始めて帝国を築いた始皇帝にまつわる話。暴君として描かれがちな始皇帝ではあるが、実際は後世に作られた人物層である面が大きい。そうした意味で人間的な側面を描いたこの作品の役割は大きいと思う。
なんといっても戦闘シーンや、広大な大地や宮廷でのシーン、どれをとっても素晴らしい画面構成だ。チャン・イーモウ監督がハリウッドで大作映画をCGを駆使して作っているが、それはそれで素晴らしいアクションになってる。しかし、大作映画を作らせたら、チェン・カイコー監督の力量にははるかに及ばないと思う。カメラの向ける構図の美しいさは天下一品なのだ。それでいて、もともとドキュメンタリーのような作風を主体にしているので、人物描写に長けている。
この映画は、そうした美しい広い画作りのうまさと、繊細な人物描写と、どちらも優れたレベルで描かれている、奇跡的な作品だ。チェン・カイコー監督のこの作品を観て、僕の中では黒澤明に匹敵する存在となった。それくらい好きだ。

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