【監督】 アンドレイ・タルコフスキー
【出演】 オレーグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン
【公開】 1983年 露 126分
【受賞】 カンヌ国際映画祭創造大賞
【ジャンル】 人間ドラマ
あらすじ
ロシア人作家アンドレイと助手のエウジェニアは、自殺した作曲家パヴェル・サスノフスキーの取材のために、イタリア中部トスカーナを訪れる。アンドレイは持病の心臓病を患っており、余命が長くなかった。泊まったホテルで、アンドレイは自分の故郷の夢を見る。そこには霧に包まれ、走り回る少女と森の風景が広がっていた。
旅の最後に立ち寄った小さな温泉街バーニョ・ヴィニョーニで、二人は「もうすぐ世界の終末が訪れる」と信じ込み、家族を七年にわたって俗世から隔離し、周囲から狂人と呼ばれる男、ドメニコに出会う。エウジェニアはドメニコの言動に苛立ちを覚え、二人の元を去るが、アンドレイはドメニコに対して関心を示す。アンドレイはドメニコの住まいを訪れ、そこに書かれていた「1+1=1」という奇妙な数式を目にする。ドメニコはアンドレイに第九を聴かせ、「ろうそくに火をつけ、広場の温泉を渡りきることができれば、世界は救済される」と言い、アンドレイはそれを約束する。アンドレイはその後宿に戻るが、性交をアンドレイに拒否さらたエウジェニアは「恋人が待つローマに戻る」と言い残して去っていく。
エウジェニアから一本の電話を受け、「ドメニコがローマに渡り、演説を3日間に渡って続けている。彼は自分があなたに言った事をしたかと尋ねている」というものだった。ドメニコはカンピドリオ広場の像に上り、人々が見守る中で演説を続けていた。「私たちは無駄と思える声に耳を傾けなければならない」「私たちの耳と目に大いなる夢の始まりを満たすのだ」そしてドメニコは狂乱の中で頭からガソリンをかぶり自ら火を放つ。エウジェニアが心配して駆けつけた頃には時すでに遅く、大音量で第九を流し、焼身自殺を遂げる。
一方でアンドレイは再びバーニョ・ヴィニョーニを訪れ、ドメニコに言われていた、ろうそくに火を付けて温泉を渡りきるという試行を行っていた。何度かの失敗の後、遂に温泉を渡りきることに成功したアンドレイは突然倒れてしまう。心臓病によるものだ。その時またアンドレイは故郷の夢を見ていた。そこには懐かしい故郷と、雪が永遠に降り続ける風景が彼を包んでいた。
感想・見所
*娯楽性ゼロなので、オススメする作品ではありません。
「1+1=1」という奇妙な数式は、アンドレイがエウジェニアとの性交を拒んだ理由によって、読み解く事ができる。自分の死期が迫っている事で、性交により2になる事は、決してない。つまり得るものが何もないという事なのかと思う。
またアンドレイには自分の妻、エウジェニア、寺院で見た聖母の肖像が、重なって見えている。故郷に帰れないでいる状況を、過去の故郷と現在のこの場所とが、重なり合っている。現実と過去とを夢見ているのだ。それはつまり故郷への思いであり、過去への哀愁なのかもしれない。
映像表現があまりにも詩的であるがゆえに、見る人それぞれに感じるものは別々であり、見る時の心理状態によっても受け方は変わってくる。そう考えると味わい深い作品とも言える。
*それでもやはりタルコフスキーの作品をオススメはできない。もし観るのであれば、映画としてではなく、芸術作品を鑑賞するつもりで観た方がいい。例えば、ゴッホの絵を2時間見つめ続ける事ができる人には、オススメ!みたいな感じですw
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