ある消防団とおばあちゃんの911。

おばあちゃんの911
先日行った消防ミュージアムで、消防士に聞いた話がとても印象に残った。それは911の時の消防士の話だ。きっといくつものドラマがあったと思うが、実際に同じ消防士から聞いたという事で、余計にリアリティがあって印象に残った。

ある消防団とおばあちゃんの911の話。

あの日、ある1グループの消防隊が2機目が突っ込んだビルに登っていった。もちろんレスキューのために。エレベーターは使えないので非常階段を使って登っていった。上から下りてくる非難する人達に「頑張れよ!」と声をかけられながら、消防士達は上へと向かった。その途中、1機目が突っ込んだビルが崩れ落ちた。それと同時に登っているビルも何度も大きな揺れが襲ってきたそうだ。

グループの隊長はこのビルも崩れるだろうと考え、離脱を決断する。隊員は急いでビルを降り始めた。その途中で70代のおばあちゃんに遭遇する。それが17階。その足取りはとてもゆっくりで、隊員はおばあちゃんを励まし一緒に非常階段を降りる。途中、おばちゃんは何度も「もう歩けない」と言って諦めそうになるのだが、それでも隊員に励まされ歩き続けた。自分の命が危険であるにもかかわらず、おばあちゃんを見捨てる事はなかった。

なぜ背負って行けなかったのかはわからないが、たぶんもともと狭い非常階段が崩れた瓦礫やらで更に狭くなっていて背負って歩く事ができなかったのだろうと想像される。もしくは隊員は50kgの装備を背負っていたそうなので、そのせいでおばちゃんを背負う事ができなかったのかもしれない。いずれにしても励ましつつ降り続け、おばあちゃんも隊員もなんとか生き延びることができたそうだ。後日おばちゃんは記者の取材に対してこういったそうだ。

「強さ、勇気、気遣い、私はこれまでこんなにやさしい人に会ったことがないわ。彼らは常に私を励まし続けたの。『あなたを置いては行かない。一緒に生きよう!』って。そして彼らはそれをやってのけたのよ」

僕の感じる消防士って、アメリカの消防士はもとより日本の消防士も、なんか気さくな感じでいつも明るいって感じ。いってしまえばノー天気な感じをうける。でも基本的に彼らは自分の命を顧みずに人命救助の仕事としている。責任感の強さは半端なものではないと思う。

以前、東北大震災の時に起こった原発の爆破の際も、東京消防庁からの命令で消防士が作業にあたった出来事があった。その作業完了の記者会見で、隊長達が涙をこらえながら、作業の報告を行っていた。とくに自分の隊員に対する責任からだろう、隊員に対する感謝を述べていたシーンには感動した。それを見た時、命を預かる隊長としての責任と、重圧の重さを初めて知った気がした。

東北の震災では自衛隊にいる友人からも、その過酷な作業現場の話を聞いた。命を張って生きている人がいることを知ると、自分がどれだけ生ぬるい世界で生きているのか思い知らされる。こういう人達がいるから世界は、社会はうまくまわっている。それを忘れてはいけないと改めて感じた。

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