『奇跡の海』

2013/11/27

【監督】　ラース・フォン・トリアー
【出演】　エミリー・ワトソン,ステラン・スカルスガルド,カトリン・カートリッジ
【公開】　1996年　デンマーク　158分
【受賞】　1996年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ
【ジャンル】　人間ドラマ

どれが正しいのかなんて誰にもわからない、愛の形。

予告編

あらすじ

舞台はスコットランドの海沿いにある小さな村で、閉鎖的で厳格なプロテスタント信仰が根強く残っている土地。

やや知恵遅れ気味に感じられるほど、信仰に篤い女性であるベスは、北海油田で働く村の人間ではないヤンと結婚する。ヤンの同僚たちやベスの義姉ドドは心から祝福するが、教会の長老たちなどは白い眼を向けていた。しかし２人は深く愛し合い、幸せだった。ヤンは油田作業のために家を開ける日が続く。ヤンなしでは生きてゆけないベスは教会に行き、早く彼を私の元に帰してくれと祈るのだった。しかし帰ってきた彼は事故に巻き込まれ、一命を取り留めたものの、下半身不随となって帰ってくる。彼がこうなったのは自分が祈ったせいだと思い込み、自分を責めるべス。一方、ヤンは下半身不随で歩く事もできない。彼はベスにセックスのできない自分の代わりに、誰かとセックスしてほしいと言い、さらにその様子を聞かせてくれと言う。そうすることで自分もベスと愛し合うことができると。ベスは彼のために男達と関係を持ち、それをヤンに聞かせた。周囲の忠告も無視してベスはその行為を続ける。やがて娼婦のようになっていくベスを、周囲の人は見放し、忌み嫌っていった。

ヤンの容態がこれまでになく悪化していく中で、ベスはより強い神の加護を得ようとし、娼婦ですら嫌がる荒くれ者たちがいる漁船へと向かう。漁船から戻ったベスは性的暴行で重体となり、病院に運び込まれるが、そのまま息を引き取る。

数日後、ヤンは奇跡的に回復し、立てるまでになっていた。彼は妻の遺体を密かに盗み出し、海上油田にやってくる。そして葬った。

レビュー

とにかくやるせない。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督によるこの作品も、二度と見たくない程に、心をえぐられる。もし自分が性的不能となり、若い妻を持っていたとしたら、どうするだろうか。ある種の究極の選択であり、究極の愛の形を体現している作品だ。妻としては耐えられるのか、どっちを選択したとしても。セックスレスに悩む夫婦が最近増えているというが、これを見てどう思うのだろうか。答えはもちろん１つではない。ただ投げかけられた問題が、人間として生物として、あまりにも根本的な問題であるだけに、答えるのが難しい。